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「つーか自炊もできないのによく一人暮らししようと思ったわね、アンタ」
「できないからって苦手な事を遠ざけてたら、いつまでたってもできないままだよ。 大体杉谷くんは…………」
このまま行くと松本式説教コースに突入しそうだと判断した杉谷は、慌てて篠木の振って来た話題に食いついた。
「親の仕事がさ、結構世界中飛び回る系なんだよ。ガキの頃それに着いて回ってたせいで転校続き。なかなか友達もできねえし、できてもすぐにお別れだ。それが嫌で高校に入るとき親元を離れたってワケだ。」
「ふーん、アンタも大変ねー」
「でもまあそれなりに楽しんでるよ今の生活」
それは結構、と満足気に頷いている篠木の横で松本が口を開いた。
「あの…………杉谷君、その袋冷凍食品も入ってるんだよね? 引き止めた側が言うのもなんだけどそろそろ帰らないと、溶けちゃうんじゃ…………」
「やっべ、忘れてた! 悪いけど俺もう帰るわ!」
松本の指摘にハッとした杉谷が気にしたのは買ったものを入れた袋ではなく、家に一人残してきた少女のことだった。さすがに飢えで倒れるとは思わないがあんまり待たせるのも悪いと思いそろそろ家に帰ることにする。
「うん、引きとめちゃってごめんね。 いい週末を」
「じゃねー! まった来週ー!」
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