第1章

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二人の声を背中で受けながら家に向かって走り出す杉谷。ここから家までそう遠くは無く、軽く走って十分程だ。杉谷は部活に入っているわけでもないがそれなりに体力はある方なのでそれぐらいの距離なら大して苦にもならない。 しばらく走ったところで杉谷は違和感を覚えた。 人がいない。 少ないではなく、いない。普段なら部活帰りの学生や夕飯の買出しに来ている主婦たちで賑わっている時間帯だ。 「気にしすぎか…………そういえば俺も腹減ったな」 最初に作ったカップ麺はゴタゴタがあって食べる前に伸びてしまっていたので、結局今日は朝からなにも口にしていないことになる。 とっとと帰って飯にしよう、そう思い少し速度を上げようとしたところで前方に一人の男が立っているのに気づく。 ギチリ、と杉谷の足が止まる。
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