第1章

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(とにかく小槌を持つ手から目を離さなければ直撃することはない……筈だ) 男との距離はおよそ10メートル。 全力で駆ければ5,6歩で届く距離だ。当然、相手に近づくためには鉄球の雨をかいくぐっていくしかない。 勝機はある。 いくら跳んで来る鉄球が速くとも一度打ち出された後の軌道は変わらない。つまりパチンコ玉が小槌で打たれる瞬間を注意してみていればある程度のコースは予測できることになる。 「ふッ――――!」 短く息を吐き大きく一歩を踏み出す杉谷。 はっぴ男が小槌を大きく振り上げる。その急な角度から足元狙いの攻撃と判断した杉谷は、踏み出した足をバネに思い切り跳躍する。直後、杉谷の足があった位置を鉄球の束がえぐっていく。 (行ける……このままあいつの懐に……ッ!) さらに前へ進む杉谷に、 「ちょろちょろしてんじゃねえよ! いい加減潰れとけェ!!」 ことごとく己の攻撃を避けられ業を煮やしたのか、はっぴ男が叫びとともに今までより大きく振りかぶった。その動きは先ほどと同じ横振りだ。
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