第1章

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この一撃を越えれば杉谷は男に届くだろう。 行ける、そう判断した杉谷はより一層足に力を込めて突き進む。  先ほどと同じく前かがみになることで鉄球の予想軌道から逃れようとする杉谷だったが、そこで己の判断が間違っていたことを思い知らされる。 杉谷は小槌をもっている右側に重点を置いて警戒していた。そのため左側から顔面目掛けて跳んで来たパチンコ玉への反応が遅れる。 それは小槌で弾き飛ばされたのではなく、直接手で投げられたものでたいした威力もないただの銀玉だったが、反射的に左手で顔を守る杉谷。 咄嗟の行動だったがそれは自らの視界を塞ぐという、このタイミングにおいて最悪の結果をもたらした。 (やられた――――ッ!) パチンコ玉を叩き落した杉谷は急ぎ視線を動かし相手の動きを確認する。 見上げるような視線の先に小槌の姿はない。ならば、と思い視線を下に向けると今まさにパチンコ玉と小槌の表面が接触する瞬間だった。 (くそ、まず――――)
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