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迫り来る鉄球をかいくぐり一気に男との距離を詰める。
直撃こそしなかったものの、体をかすめていく無数の鉄球は確実に杉谷の体力を削り取っていく。
視界は揺らぎ、足は巨大な鉛をぶら下げているかのように重い。
それでも、杉谷誠司は止まらない。そんな事は立ち止まる理由にすらならないと言わんばかりに。
男が小槌を持った腕を大きく振り上げる。二人の距離はおよそ2メートル。
このまま男が腕を振り下ろせば、至近距離から打ち出されるパチンコ玉に杉谷の体は粉砕されるだろう。
「なかなか根性あるみてぇだけど…………ごり押しだけで届くと思ってんじゃねえぞ!」
はっぴ男が武器を持つ腕を振り下ろす。それで勝敗は決する、暴力的な鋼鉄の嵐が杉谷の体を蹂躙する…………筈だった。
ぽすん。と、およそその場に似つかわしくない音がした。
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