第1章

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「あ?」 予想外の手ごたえに一瞬思考が止まる。直後、はっぴ男の視界が紺色一色に染まった。 唐突に男の視界を塞いだのは先ほど杉谷が傷口を縛るために使っていた学校指定のブレザーだった。 杉谷が彼の血を吸って重量を得た制服を鞭のようにしならせ、振り切られる直前の小槌とパチンコ玉の間に滑り込ませていたらしい。 何が起こったか、それを一番理解できるのははっぴ男自身だろう。 (こ、いつ――――。小槌の力を利用して――――ッ!?) 意表を突かれたはっぴ男がワンテンポ遅れてシーツサイズとなった紺色の衣類を振り払う。そこにはすでに拳を振りかぶった杉谷の姿があった。 「おっせえよ」 矢のように放たれた彼の拳が男の顔に突き刺さった。 ドゴン!! と、凄まじい音が周囲に響きわたる。 そのまま振り切られる拳に引きずられる形で地面を転がるはっぴ男、その力の抜けた手から小槌がこぼれた。
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