第1章

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「あの時はやばかったなぁ。 異臭に気付いた大家さんが事件と勘違いして警察に通報されそうになるし」 まぁ、そんなこんながあって俺は自炊については完全に諦めてしまっている。 そんな昔と言っても1年程前の出来事をしみじみと思い出しながらインスタントラーメンの容器にお湯を注ぐ。 「さて、今のうちに部屋の掃除でもするか」 三分やそこらでまともな掃除なんて出来ないだろうと思いつつ部屋に戻り、辺りを見渡す。 読みかけの漫画、学校のプリント、脱ぎっぱなしの衣類等々。 「我ながら散らかってんなぁ」 男の一人暮らしなんてこんなものだろう――とキチンとしている男性が聞いたら怒りそうな事を考えながらどこから手をつけていいかわからず頭をかく。 とりあえず漫画を本棚に戻すか…………テレビから聞こえてくるニュースキャスターの声をBGMに作業を始める。 床の漫画に手を伸ばしたところで玄関のインターホンが鳴った。 「はいはい、今行きますよっと」 なんでこういう時って先に返事してしまうんだろうか。 そんな事を考えながら玄関に向かいドアを開ける。玄関先にいたのは、デフォルメされた黒猫をあしらった制服を着た青年だった。 「こんちわー郵便でーす」
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