ー波風立ててー

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  「こんなもんだね」  残ったのは、裏切った剃り込み頭と柿谷。柿谷の集めた不良達は1人残らず打ち倒された。1分とかからぬ、一方的な喧嘩で。 「そん……なバカな」  柿谷の表情に、既に余裕は残っていなかった。植え付けられたのは、それこそ圧倒的恐怖。完全優位の形成一転、仲間全滅の絶対不利だ。 「お前そんなに強くなかっただろうが! 隠してたにしろ、この人数に勝てるわけがねぇ!」 「ふふっ、変かい?」  シュウは声に出して笑ってしまう。それほどに柿谷の狼狽えぶりはシュウの笑いを誘うものだった。額に汗が滲み、その巨躯は小さく縮こまり、震えている。剃り込み頭は顔を青くし、話すことすらしない。 「僕はね、君達のことなんてもうどうでもいいんだ。狭い世界で調子に乗って、何が楽しいって言うんだろう」  シュウは柿谷に歩み寄る。剃り込み頭はその行動に異常に怯え、後ずさる。退かない柿谷の胆力は、ある程度とはいえ流石のものだ。 「誠良高校なんて底辺の世界で上に立ったところで虚しいだけだよ。世の中には楽しいことは山ほどある。僕はそれを見つけたのさ」 「くっ……そがあああああ!」  柿谷は怯えを押さえ込み、シュウへとその大きな拳を放った。
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