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さえずる小鳥の鳴き声は薄れ、蝉のざわめきがぶち壊す。春眠の心地よさは季節の移ろいと共に消え失せ、汗の張り付くパジャマの不快が襲う。
うん、あれだ。
キレそう。
「起きたか」
「五月蝿い近い」
「あぁぁ゙あ゙ぁぁ゙あああ゙……理不尽だこんなのぉおおお……」
仰向けで額から赤い汁を流す友人はさておき、腰まで掛けていた布団を剥がす。今日も暑いらしい。頭痛い。
えーと。昨日は確かシェリルの家で飲んでたんだった。課外学習終わって、牢屋に入れられて。むちゃくちゃかよ。で、飲んでて……写真撮ったあたりからあんまり覚えてないな。飲み過ぎか。どうやって帰ってきたのかもあんまり覚えてないな。
「アイク、二日酔いとかないのかよ」
「ないけど頭は確実に痛え。外傷的な意味で」
「強いんだな。俺は中も外も痛いのに」
「外のことは本当に理不尽だと思う」
「やあおはよう! アイク君は今日も元気だね!!」
「元気一杯に罪を隠蔽するのはやめろ」
ごしごしとおでこを拭うアイクを満面の笑みであしらいつつ、ぐっと身体を伸ばす。と、身体に電気が駆け抜けぽてんと俺は倒れてしまう。
あ、これイカンやつだ。
「アイク?」
「あん?」
「初めてお前の家に泊まらせてもらって申し訳ないんだけど」
「おう」
「動けん」
「は?」
始まらない夏が、始まる。
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