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「あ、慶佑か?」
カスミには、全てを話した。
「うん。ああ、今ちょっと動けないんだ」
それが良いことなのか悪いことなのか分からない。いや、良いも悪いもないのか。
「練習全然行けなくて悪いな」
だから、迷う。言ってどうなる? 何か変わるのか? 分からない。思い付くのは嫌な未来ばかり。逃げたい。目を背けたい。そんな未来。
「ん? 体調か? ちょっとバテてる。熱っぽい」
だったら何故話したのか。エリステリアの言葉が、それほどに効いたのか。だけど、それだけではない。
「悪かったよ。早く治して練習行くから」
進み、たかった。上辺だけの関係が嫌だった。楽しいだけが嫌だった。信じきれないのが嫌だった。変えたかった。
「あ、今? んー……1人だ。かなり楽になったから、見舞いとかいらないぞ」
後ろめたさを押し殺して、歩み寄る。向こうから来るのを待つだけ。そんなのは虫が良すぎる。だから、進む。怖くたって、進む。
「全校登校日? あ、そろそろか。それは行けるよ。大丈夫だって」
でも。
「うん、ありがとう。じゃ、切るな。バイバイ」
今切った電話を見て、思う。
あの世界で、進めば進むほど、
俺はあいつらから離れているのか。
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