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「いつ?」
「23日」
全校登校日は4日後である。今でこそ夏休みで気兼ねなくあちらの学園に通えるが、そろそろそうも言えなくなってくる。
「セミナーの更新もしないとな」
夏休みは終わりが近い。生活リズムが変化し、その余波は多様に及ぶ。俺も学校が始まるならセミナーを変えなきゃいけない。
「考えておくわ」
そう言って、カスミは静かに話を切った。
「君達、高校同じなのかい?」
「ああ、言ってなかったっけ。一応同じ。俺もあっちで会って初めて知ったんだけど」
聞き役に徹していたリユスが会話が切れたことを察して話題を出してくれた。流石腹黒紳士。
「こっちでカスミは行方不明ってことになってるんだ」
「ああ、それで母親の話なんだね。事情は分からないけど、あまり放っておいていい問題ではなさそうだね」
「はぁ、あんたまでそう言うのね」
カスミは少し辟易しているようだが、心から嫌がっているわけではなさそうだった。顔には迷いが見える。
「僕達って思っているよりあまりお互いを知らないよね」
その言葉に、俺の鼓動は少し早まった。悩みの種を外から突っつかれた気分だ。
でも、少し安心した。
俺一人の悩みじゃ、なかった。
「リユス。高校ってどこなんだ?」
会話の流れに乗る。とにかく、俺はみんなのことを知りたかった。好奇心といえばそうなのかもしれない。でも、好奇心だけじゃ説明できない何かがあって。
「知りたいかい?」
それはきっと。
「誠良高校、だよ」
きっと、何だろう。
俺はその先、何を思っていたんだろう。
たった3文字の高校名如きに俺の心は簡単にかき乱されて。
「……へぇ、そうなのか」
大して話が膨らむわけでもなく、沈黙が訪れた。
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