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(分かんないな)
何故動けなくなったのか、何故動けるようになったのか。原因も結果も不明だ。帝都での騒動に何かしら原因が隠れているのだろうが、記憶がかなり断片的。アカツキとの戦闘は、半分くらい覚えていない。
(まあいいか)
考えても仕方ない。行き当たりばったりに生きていればよくあることだった。好奇心の果てが、これだ。まさかこんな夏休みになるなんて。
今日は月曜日。結局学園にはあれ以来行っていない。怪我の休みと、土日と。行けばシェリル達にぶん投げた課外学習のレポートについて何か言われるのは目に見えているので、なんとなく得した気分ではある。
学校の最寄りに着く。まだ冴えない頭で電車を降り、改札を抜けた。
そこで、俺を待ちかまえている男がいた。
「やっと来たな、海斗」
「慶佑か、おやすみ」
「待てぃ」
素通りしようとすると肩をガシッと掴まれる。面倒だよー、眠いよー。
「何だよ」
「身体は大丈夫なのかよ」
「お陰様で」
4日寝てたし。昨日一昨日は本当に何もしていない。久しぶりに、オフらしいオフだった。
「部活にも来ないで、心配するだろ」
「んー、今年の夏は身体が冴えない」
当たり障りのない受け答えは、もはや淀みない。異世界を隠す嘘は日常だ。慣れてしまった。
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