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教室は懐かしかった。階段状の教室に見慣れていたものだから、平坦で机が整然と並ぶ教室が、とても新鮮に映る。10人ほどが既に教室で談笑し、俺達が教室に入ると久しぶりと声をかけてきた。
「え、御堂君。君また茶髪明るくなってない?」
「え、マジでか」
「自分のことでしょ」
「光の加減とかじゃなくて?」
真っ先に指摘されたのは頭髪。あちらの世界に行って、明るい茶髪になったのは間違いないが、どうやらさらに拍車がかかっていたらしい。
自分では分からないその変化は、級友達には新鮮だったようだ。談笑を切り上げ、わらわらと周りに群がってくる。
「え、ちょ、何?」
「うわ、こりゃ不良だ」
「ね。なんでこんなことに」
「夏の魔物の仕業かな」
「夏は! こうも! 人を! 変えるのか!!」
思い思いに感想をぶちまける級友達。髪を触り、払いのけても別の手が迫り、ベタベタと髪を乱される。
自分でも分からない部分を指摘されて俺は戸惑うしかない。そんなに茶髪になっていたのか。だけど、とりあえず言いたいことは一つ。
「席に……行がぜろぉ!」
「「「ダメ」」」
儚い願いは、茶髪もろともぐちゃぐちゃにされた。
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