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「お久しぶり皆の衆……御堂? どうして早々にスライムみたいになってるんだ?」
「せんせー、僕はいじめにあいましたー」
「己の未熟を呪え」
武将好きの先生が武将のような言葉でいじめを切り捨てた。あるまじき! 許すまじ!
すっかりぼっさぼさになった髪の毛はもうどうにもならない。しっちゃかめっちゃかに跳ねた毛先は直す気すら起こらない。整髪料は使っていないから、まだマシだ。
どうやら茶髪具合は順調に進行していたらしい。土属性の強い俺は、その色が髪にも色濃く反映される。染め髪ではなく、地毛がこうなってしまったのだ。
物珍しさからか、ホームルームの進行中にもちらちらと視線を感じる。ああなんてこった。まあいいか。
だらだらと進むホームルームの中、窓際の席に座る俺は運動場を眺める。端っこのほうに、フェンスで仕切られた我らの本拠地、テニスコートがある。さっさと終わって、テニスさせてくれないかな。
(ん?)
校門から、1人。誰かが入ってきた。
制服に身を包み、携帯電話を耳に当て入ってきた男。誰かは知らないが、何か違和感があった。
(荷物、ないのか)
違和感の正体は、それかもしれない。遅刻にしても荷物くらいあってもいいのに。
まあ、どうでもいいか。
俺は姿勢を崩し、眠りについた。
‡ ‡ ‡
「あー着いた着いた! 着いたよ」
「ここにいるんだっけ? ああ、うん。名前は……了解」
「染めたよ。しっかり黒髪だよ。うん、服も綺麗に手に入れたよ。任せろよ」
「じゃあ切るよ。終わったらまた連絡するよ。楽しみにしててよ」
「────さぁて、行くよ」
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