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「お、おい御堂。どこ行くんだ」
「ちょっとトイレ」
後ろのやつに不審がられながら、俺は適当な理由をつけて抜け出す。カスミが何組か、それさえも知らないが進堂という名前なら少し後ろにいるのではないだろうか。
並びは男女別。男子の後ろに女子が出席番号順に並ぶ。全てのクラスが縦に並び、それが学年順に体育館に整列している。
確か、西條が隣の組だったはずだ。ということは、そのあたりまで行けばサ行の女子達がいるエリア、か。
整然と整列している黒の点を蠢く茶色の点。壇上からはさぞ目立つであろう。御免、校長。おぬしの話は大層つまらない。
視線を浴びながら俺は後ろへと進む。隣のクラスの友人達が茶髪に食いついてくるが、適当にかわしながら歩を進める。
「え、御堂君。何してんの」
「おーいたいた」
ばちっと西條を発見。驚いた表情を俺に向け、疑問を投げかけてくる。
「ちょっと人捜し。サ行の女子だから西條の近くかなあと」
「集会中よ。じっとしてれば?」
「アイツの話は非常につまらん」
「相変わらずわけわかんないことするわね、御堂君は」
溜め息をつく西條は呆れていることを全面に押し出してくる。西條の中で、俺の印象は褒められたものではなさそうだ。なんてことだ。
「で、誰を捜してるの?」
「進堂ってやつなんだけど……あっ」
キョロキョロと辺りを見回すと、不自然に黒い髪をした女の子。長い髪が妙な艶めきを放つカスミらしきやつが、2列先ほどに見えた。
なんだ、来てたのか。
良かった。
「おーい」
声をかけようとする。
その時だった。
『みなさん! 注目!!』
校長ではない声が、スピーカーから体育館に響き渡った。
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