第1章

13/25
前へ
/165ページ
次へ
話し合った結果、茜ちゃんと夜千ちゃんが私の家まで送ってくれることになった。自覚は無かったが、私はどう見ても普通の精神状態ではなかったようだ。〝呪われた子〟と間違われたら、この平和で居心地いい世界が壊れてしまう。私にはそれが怖くて仕方なかった。茜ちゃんと離れるのが悲し過ぎる。いつも面白がって私をつついたりこそばしたり、そして抱き締めたりする女の子に恋していた。あのポニーテールに恋してる。 帰り道、茜ちゃんがグダグダと人生観や幸福論を語っていた。茜ちゃんによると幸せはプライドと引き換えに手に入るものらしい。夜千ちゃんも話の中に入って、孤独になると人は発狂すると怖いことを言った。私は付いて行けず、自分は何のため、何を基準に生きているのか考えた。〝茜ちゃんを守ること〟で価値観のピースがかちりとハマった。 そんなちっぽけなことのために生きられる幸せが私を満たす。 夕陽が美しい。闇が徐々に侵略する中、広大に姿を現している。 獣道を歩いていた。 私は聞き耳を立てた。狼が近付いて来る。きっと茜ちゃんや夜千ちゃんは、気付いてないだろう。 素早く〝石の目〟を使う。 狼が牙を剥き出しにしたまま、暴れているのが分かった。それでも、もう動けないのは私がよく知っている。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加