2人が本棚に入れています
本棚に追加
ポニーテールを見ていた。
茜(アカネ)ちゃんは私を猫目で捉え、誰もいない屋上で壁に押し付けた。
私は茜ちゃんの視線に耐え切れず、俯く。茜ちゃんはそっと私の顎を持ち上げ、唇を近付けた。そのまま、唇と唇を重ね合わせる。
心臓がこれ以上なくドキドキしている。破裂しそうな勢いだ。
茜ちゃんの胸の中で頭から血が登っていくのが分かった。茜ちゃんの胸は柔らかくて、暖かくて、私とは大きな差だ。
私は思わず、声を上げた。
「あ、茜ちゃん……人が来ちゃうよ。ダメ……」
雛(ヒナ)、と茜ちゃんは私の名前を呼んだ。
「ここは女子寮よ。男は一匹足りともいないわ。嫌なの?雛」
私は困惑した顔で、茜ちゃんを見た。どういうことなのか、分からなかった。
「あ、あの、茜ちゃん、嫌って何が?」
茜ちゃんが、私の制服のリボンを解く。
「こういうことをされるのが、よ」
茜ちゃんはいつもと違う笑みを見せた。好色的な笑みは茜ちゃんのキャラに合っていない。いつもは無邪気で屈託無いサバサバとした笑みを浮かべるのに、今日の茜ちゃんはおかしかった。
それでも私は抵抗しなかった。子供の頃から人に抵抗したら、恐ろしい目に遭うと人生(ヒトミ)から教わっていた。奈江(ナエ)も何も言わなかったが、私が泣く度に「強くなりなさい」と告げた。
最初のコメントを投稿しよう!