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私が転校して来て、一番に声をかけてくれたのが茜ちゃんである。
茜ちゃんは何でもできる子で気が強く明るかった。何より、女子寮で輝いたのはそのサッカーの足捌きだ。彼女のサッカープレイ姿に惚れる女の子は山程いる中、私も彼女に惚れていることに最近、気付いた。同性なのに意識している。たまらなく好きなのだ。
ただ邪魔者がいた。
最初は夜千ちゃんに腹を立てた。こんな私でも流石に初恋が実らないなんて許せない。けど、茜ちゃんの話で何となく仕方ないことだと思い始めた。
夜千ちゃんは茜ちゃんと幼稚園の頃から友達だった。夜千ちゃんは病気がちでいつもぼんやりとした所があったけど、勘が鋭く、長い漆黒の髪と礼儀正しさで私なんかでは手に入らない大人っぽさを兼ね備えていた。きっと、茜ちゃんは夜千ちゃんの大人っぽさに憧れているのだろう。私が茜ちゃんの自信に満ちた行動力に憧れているのと同じ由縁だ。
だとすればーー私はただ茜ちゃんの側に居られることだけを喜べばいい。
チャイムが鳴る。
「あ、ヤバい!教科書忘れて来た!次の授業、化学だよね?」
茜ちゃんが焦っている。
私は落ち着いて、化学の教科書を取り出した。
「あ、あの……私の寝坊が原因なら、受け取っていいよ」
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