第1章

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「1年の今日来た転校生よ。確かB組だった気がする。何か言われた?雛」 茜ちゃんが私の顔を覗き込む。 「具合悪そう」 私は、平気、とまた嘘を繰り返した。 「雛さん、大丈夫ですか?」 夜千ちゃんまで心配気だ。 夜千ちゃんが私の手に自分の手を重ねる。ホットココアの空が屋上のフェンスを越え、遥か下に落下したが、夜千ちゃんは全く意に介さない。 「雛さん、帰り道、一緒に帰りません?出来たら、お家までお届けします」 夜千ちゃんの凛とした姿に思わず、甘えたくなる。こんなお姉さんがいたらいいな、と思った。 夜千ちゃんの手に熱い想いが宿っている気がしたが気のせいだろうか。 「えー、夜千!雛と抜け駆けか?コンニャロー!!」 茜ちゃんが何故か、夜千ちゃんでなく私に向かってこそばして来た。私はクスクス笑いながら、夜千ちゃんを盾に茜ちゃんの魔の手から逃げ回った。夜千ちゃんが必死に庇ってくれるのが、少し嬉しかった。 「仁村さん、私を〝呪われた子〟って言うんだよ。どういうことかな?」 ひと段落ついた時、ポツリと呟いた。 茜ちゃんがポカーンとした様子で夜千ちゃんはいきなり怒り出した。 「あり得ない。そんな訳ないです。雛さんは天使のような人で呪われているのは、仁村さんですよ」
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