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「なぁ、そこの看護師さん。俺の占い聞いてかねぇ?」
「……え?」
うぁ……なに、この声!
すごくいい!
甘く、セクシーなヴァリトン。
そして、どこか懐かしく響くの声に、胸の鼓動が早くなる。
時刻は、夜中の一時をとっくに過ぎていた。
最終電車の出て行った繁華街は、まだちらほら人通りがあるものの、お世辞にも治安が良い、とは言えない。
しかも、今から七時間後。今朝の朝八時半からまた仕事が始まるはずだった。
なのに、思わず足を止めてしまったのは、今まで聞いたこともない良い声が、深く響いて耳をくすぐったからだ。
その上、わたしの職業を当ててるし!
声につられて振り返れば、知らない男(ひと)がシャッターの閉まった店の入り口に、よりかかるように立っていた。
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