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「でも、それが、わたしに何の関係が?」
実家はどうあれ、わたし自身は病院経営とは、何の関係もない、一介の看護師だ。
こんな風に、別の病棟から呼ばれる意味が判らない。
すると、咲先輩は、言った。
「その方は、外国人で、イタリア語とドイツ語と英語がしゃべれるんだけど、日本語が良く判らないらしいの。
通訳も一緒に来ているみたいなんだけれど、できれば、現場の生の声を直接聞きたいので、その三カ国語のどれかをしゃべれるヒトに、病棟案内をしてほしいんだって」
鈴原さん。あなた、英語は日常会話ぐらいはしゃべれるんだよね?
なんて、低い声で聞いて来る咲先輩の声に、わたしはとりあえず頷き。
咲先輩は、満足げに頷いた。
「じゃ、病棟の案内は任せるって総婦長が言うはずだから、失礼の無いようにね?」
「だから、なぜ、わたしが案内する必要があるんです?」
イタリア語やドイツ語がしゃべれるならともかく、英語ぐらい、ねぇ?
咲先輩は語学が苦手みたいだけど、特別病棟はセレブ病棟だ。
外国人の患者さんも快適に過ごすことが出来るように、みんな訓練されている。
英語ぐらい他にしゃべれる看護師(ヒト)がいるはずじゃないの?
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