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「雫ちゃん!逃げてっ!」
私の声で小さく震えて、慌ててドアへと駆け寄る雫ちゃん。
だけど、それを見た幽霊がベッドの下から完全に這い出し、私達に迫って来たのだ。
ガチャリとドアが開き、雫ちゃんが部屋の外に出る。
私もそれに続いて廊下に飛び出し、階段へと走った。
ベタンベタンと、変わらず這っている音が背後から聞こえる。
階段を下り、家の外に出るくらいは引き離したかなと振り返った時、私は、その考えが甘かったと思い知らされた。
階段の上、二階から降って来た幽霊を見て……一瞬何が起こったのかわからずに動きを止めてしまったのだ。
あ……まずい。
凶悪な霊に襲われたら、どうなるかわからない。
最悪死ぬ事だってありえるのに……私の身体は動かなかった。
迫る幽霊の手、黒く禍々しい瘴気を放ちながら、私に激突する瞬間。
グッと腕を引かれて、誰かに抱き締められたような感覚に包まれる。
その横で、幽霊が床に着地する、バチンという激しい音が聞こえた。
「そこにいるな?音彩ちゃん、雫ちゃん、俺の後ろに隠れているんだ」
鍵を掛けていたのに、どこから入ったのか、西尾彰が私を抱き寄せて幽霊と対峙したのだ。
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