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カランカラン……。
あれから30分が経過して、結局何も聞く事が出来ず。
店のドアが開く音が聞こえて、村田さんがぶっらぼうに「いらっしゃい」と小さく呟いた。
私も、カウンターからそっと顔を出して見てみると……そこにいたのは西尾さん。
随分げっそりとやつれたような表情で、良く見れば顔にキスマークがいくつか付いていた。
「い、いらっしゃいじゃないだろ!!ここにいるならいるって連絡しろよ!あのババアを巻くのに、俺がどれだけ苦労したか……」
フラフラになりながら、カウンター席に座って、やつれた顔を私に向けた。
「だけど……音彩ちゃんが無事で良かったよ。やはりマイエンジェルを捕まえる事が出来るのは、このナイトだけのようだね」
私を指差して、ウインクをする西尾さん。
だけど、顔中にキスマークを付けて、口にまで口紅がべっとりと付いた顔でそんな事を言われても……。
「は、はい……おしぼり。西尾さん、いっぱいキスされたんだね。あのおばさんに」
憐れみ半分、おかしさ半分で、笑いをこらえながらそれを手渡すと、西尾さんは慌ててそれで顔を拭いた。
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