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「ふざけるな!俺がこんなババアの尻なんか触るか!」
駅のホームで、駅員の前で女性を指差して怒鳴っている男性を、私は友達の雫(シズク)ちゃんと一緒に見ていた。
「ババアって何よ!私はまだ二十歳なのよ!駅員さん、警察呼んで!警察!」
「女子高生ならともかく、ババアの尻に価値があるか!」
二人のやり取りを見て、駅員さんは疑いの眼差しを男性に向けている。
あの人……喋れば喋るほど不利になって行ってるよ。
「音彩(ネイロ)ちゃん、あの人お尻触ってないよね?」
雫ちゃんの言葉に、私は「うん」と呟いて、騒がしい二人に近付いた。
「そのババアのお尻触ったのはあんたでしょ!?いい加減に……」
「あ、あの!その人、お尻触ってませんよ?こうやって、両手で吊革握ってましたから」
電車の中で、私と雫ちゃんが座っているシートの前に、この二人は立っていた。
特に男性は、見とれるくらいの美形だったから良く覚えている。
その時男性がやっていたように、両手を上げて見せた。
「おお……エンジェル……」
男性は、女性に向けていたのとは全く違う表情を私に向けて微笑んだ。
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