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一体、何がどうなってるのか、私にはさっぱりわからない。
ただ、一つだけ言える事は、女性の肩からこの男性が霊体を引き抜いた後、急に態度が変わったという事だけ。
「人を散々痴漢扱いしておいて逃げるつもりか!謝罪を要求する!!」
走り去った女性にブリブリ怒って文句を言う男性。
黒い革のズボンに黒いコート。
掴めないはずの霊体を掴んだという事は、そんな関係の人なのかなと思えた。
手に握られた20センチほどの長さの霊体が、うねうねと動いているけど……この男性には見えていないようだ。
「……まあ良い。さて、これは多分……『蟲』だな。見えないけどとりあえず潰しておくか」
そう言い、握った「蟲」と呼ばれたモノをグッと握りつぶし、それは空気中に溶けるように四散した。
「霊体を……こんな事が出来るなんて……あなた何なんですか?」
私の背後にいる雫ちゃんや、駅員さんには何が起こっているのかわからない。
この人は見えていないけど、霊を潰した。
私は何も出来ないけど見えている。
「俺かい?俺は西尾彰(ニシオアキラ)、キミ達のような天使を守る男さ」
ちょっと何を言っているかわからないけど、髪を掻き上げて、私達を見下ろしながらポーズを取った。
これが、私と西尾さんとの出会いだった。
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