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「あ、あれっ!?襲って……来ない?」
人魂を追ってるから、足を止める事は出来ないけど……そんな私達と併走する悪霊の意図がわからない。
それが、逆に怖さを増幅させる。
「ど、どういう事だ!?だったら何の為に……」
取り出した警棒を、どうすれば良いかわからずに、焦りを見せる西尾さん。
そ、そんな事を言われても……悪霊は私達と同じ方向に走っているだけで……。
人魂を見失わないように、前方を確認した時、私は自分の目を疑った。
ふわふわと、降下しながら移動している人魂の近くのビル。
そこに、私と併走している悪霊と同じモノが、壁面に張り付いて人魂に飛び掛かったのだ。
おかしい……霊は、人間と同じで、一体一体顔も体型も違うはずなのに。
いや、今はそれを考えている時じゃない!
「悪霊が人魂を狙ってるみたい!西尾さんのすぐ左の地面を這ってる!」
「何だって!?ここかっ!」
走りながら、器用に体勢を低くして、左側を払うように警棒を振った。
それが悪霊の顔面に直撃し、弾けて霧のように変わる。
そして悪霊は、散り散りになって消えたのだ。
「やった!」と、小さく喜んだのも束の間。
「キャッ!やだ!やめてよ!」
前方から、女性の悲鳴が聞こえた。
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