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それでも何とか、西尾彰という男を説得し、私達は急いで雫ちゃんの家に向かった。
途中で何度も振り返って、ついて来ていないか確認しながら。
何か妙な視線を感じたけど、私には見える幽霊が、何体かこっちを見ていたからそれかな。
家に到着し、鍵を掛けて雫ちゃんの部屋に。
「はぁ……怖かったね。ごめんね。変なお願いして」
部屋のドアを閉めて、溜め息を吐いた雫ちゃんに、私は首を横に振る。
「良いよ良いよ。まあ、私が力になれるかどうかはわからないけど。てか、あの変態、電柱の陰にいるんだけど!」
さっきはいなかったのに……なんで!
窓から家の前の道を見てみると、電柱の陰に隠れて辺りをキョロキョロと伺っている様子の西尾彰がいた。
どこから持って来たのか、サングラスとマスクをして。
「嘘でしょ……なんかそっちの方が怖いかも」
「ま、まあ多分大丈夫だと思うけど……何かあったら私が守るよ」
さすがに家の中までは入って来ないよね。
私と雫ちゃんは、保育所から中学までずっと一緒の友達。
高校は違うけど、昔から仲が良い。
黒くて長い髪の、お人形のような整った顔立ちは……あの変態じゃなくても見とれるくらい。
「ありがとう音彩ちゃん。例の人形はあれなんだけど……」
そう言って雫ちゃんが指差した先には……タンスの上で微笑む、可愛らしい人形が座っていた。
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