危険な夜

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……何? 離れた場所から、二人してこちらの様子を伺うように。 はたから見たら、ただ喧嘩をしているようにしか見えないだろうけど……何だろう、この違和感は。 喧嘩が始まったから見物しようとか、巻き込まれないように逃げようという様子じゃない。 姫ちゃんなんて腕組みをしながら、ジッとこちらを見ている。 優しい響さんなら止めに入りそうなものなのに……違うのかな。 「テメェはぶっ殺してやる!!」 「俺が死ぬ時は、天使に抱かれて召されたいね」 響さんと姫ちゃんに気を取られていた私の耳に、喧嘩をしている二人の声が聞こえた。 ハッと我に返りそちらを見ると、殴り掛かって来た男性の拳を回避して、西尾さんの膝が男性に腹部にめり込む。 ……こっちはやり過ぎさえしなければ、放っておいても大丈夫だよね。 そう考えて、響さん達の方を見ると……。 「えっ?」 二人は、こちらに背を向けて去って行った。 それ自体は不思議な事じゃない。 だけど、響さんが、私に見えるように試験管のような物を掲げ、左右に小さく振っていたのだ。 そして、振り返って私を見ると、微かに笑みを浮かべたような……気がした。
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