2167人が本棚に入れています
本棚に追加
……何?
離れた場所から、二人してこちらの様子を伺うように。
はたから見たら、ただ喧嘩をしているようにしか見えないだろうけど……何だろう、この違和感は。
喧嘩が始まったから見物しようとか、巻き込まれないように逃げようという様子じゃない。
姫ちゃんなんて腕組みをしながら、ジッとこちらを見ている。
優しい響さんなら止めに入りそうなものなのに……違うのかな。
「テメェはぶっ殺してやる!!」
「俺が死ぬ時は、天使に抱かれて召されたいね」
響さんと姫ちゃんに気を取られていた私の耳に、喧嘩をしている二人の声が聞こえた。
ハッと我に返りそちらを見ると、殴り掛かって来た男性の拳を回避して、西尾さんの膝が男性に腹部にめり込む。
……こっちはやり過ぎさえしなければ、放っておいても大丈夫だよね。
そう考えて、響さん達の方を見ると……。
「えっ?」
二人は、こちらに背を向けて去って行った。
それ自体は不思議な事じゃない。
だけど、響さんが、私に見えるように試験管のような物を掲げ、左右に小さく振っていたのだ。
そして、振り返って私を見ると、微かに笑みを浮かべたような……気がした。
最初のコメントを投稿しよう!