危険な夜

35/38
前へ
/182ページ
次へ
あれは何だったのか。 二人の姿が見えなくなるまで背中を見ていた私は、激しく殴り合う音の方に再び視線を向ける。 ……訂正。 西尾さんが一方的に、その長い足で男性を蹴り続け、最終的には倒れた男性を踏み付けていた。 「俺の音彩ちゃんに手を上げるなんて、お天道様が許しても、このナイトは許さん!ついでに、いくら彼女がブッサイクなババアでも、女に手を上げるやつは死ねっ!俺が殺してやる!」 なんだか凄く物騒な事を言ってるけど、西尾さんも制服を脱がそうとしていたよね……って、そうじゃない! これ以上やったら、本当に死んでしまうかもしれない! 「西尾さん!私は大丈夫だから……その人は蟲が憑いてるだけ!だから早く抜いてあげて!」 私がそう叫ぶと、男性を踏み付けていた足がピタリと止まる。 「……くっ!音彩ちゃんに言われたら仕方がない。おい、ブ男。音彩ちゃんに感謝するんだな」 そう言って、既に気を失っている男性の頭部に手を伸ばし、私をチラチラ見ながら蟲がいる場所を探った。 そこにいると、頷いて合図を送ると、西尾さんは蟲を握り締めて一気に引き抜いた。 ……男性の髪の毛を巻き添えにして。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2167人が本棚に入れています
本棚に追加