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あれは何だったのか。
二人の姿が見えなくなるまで背中を見ていた私は、激しく殴り合う音の方に再び視線を向ける。
……訂正。
西尾さんが一方的に、その長い足で男性を蹴り続け、最終的には倒れた男性を踏み付けていた。
「俺の音彩ちゃんに手を上げるなんて、お天道様が許しても、このナイトは許さん!ついでに、いくら彼女がブッサイクなババアでも、女に手を上げるやつは死ねっ!俺が殺してやる!」
なんだか凄く物騒な事を言ってるけど、西尾さんも制服を脱がそうとしていたよね……って、そうじゃない!
これ以上やったら、本当に死んでしまうかもしれない!
「西尾さん!私は大丈夫だから……その人は蟲が憑いてるだけ!だから早く抜いてあげて!」
私がそう叫ぶと、男性を踏み付けていた足がピタリと止まる。
「……くっ!音彩ちゃんに言われたら仕方がない。おい、ブ男。音彩ちゃんに感謝するんだな」
そう言って、既に気を失っている男性の頭部に手を伸ばし、私をチラチラ見ながら蟲がいる場所を探った。
そこにいると、頷いて合図を送ると、西尾さんは蟲を握り締めて一気に引き抜いた。
……男性の髪の毛を巻き添えにして。
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