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雫ちゃんの話によると、この人形は自分の物ではなく、気付いたらそこにいたらしい。
最初は、雫ちゃんのお姉さんが置いたと思ったらしく、尋ねてみたけど違ったようで。
気味が悪いからと、袋に入れてゴミに出したら……いつの間にかここに戻っていた。
そして、夜にはタンスの上でカタカタと人形が動いているような音が聞こえて、怖くて眠れなくなったという事で、幽霊が見える私が呼ばれたというわけだ。
正直、何かが見えたところで、私には何も出来ないし、どうすれば良いかというアドバイスすら出来ない。
ただそれが危険な物なのか違うのか、その判断くらいしかしようがないのだ。
「……この人形には何も取り憑いてないようだけど……でも、何か跡が……」
人形に魂が宿ったとか、そういった怪奇現象の類ではないと思うけど、気になったのは人形の額から伸びる透明の糸のような物。
これは、駅で女性に憑いていたあの蟲とは違った、霊の残り香と呼べる物だ。
それが、本当に薄く、細く伸びて行った先は……雫ちゃんのベッドの下だった。
「……そこに何かあるのかな?」
とにかく、人形が動く原因だけでも調べようと、ベッドの前で膝をついて、その下を覗き込んだ。
するとそこには……。
恐ろしい形相で私を睨み付ける、女性の幽霊の姿がはっきりと見えたのだ。
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