疑惑の追跡

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話し始めた時点で、何かをしてくるような気がしていた。 既に、コップに立てられていた西尾さんの歯ブラシを手にしていた私は、それを背後から迫る尖った口の中に突っ込んだ。 ……かなり奥まで入ってしまったけど。 「おぶふっ!おえええええっ!!ね、音彩ちゃん……さては照れ隠しだね!?それともヴェーゼは歯磨きの後が良いのかな?」 歯ブラシを口から抜き、鏡越しに私にウインクをする。 全然懲りてないよ、この人……。 「はいはい、そんな事しませんから。それより、雫ちゃんなんですけど……昨日、人形から人魂を追い出したみたいに、蟲を出す事は出来ないんですか?」 「ああ、やめた方が良いかな。俺に見えないって事は、霊体を蝕んでるわけだろ?蟲なんか、叩いただけで潰れてしまうし、お札でも同じ事だ。万が一、潰れた蟲の毒が雫ちゃんの霊体に回れば……それこそ取り返しが付かなくなるんだよ」 蟲を使って操っている、主を探さなければどうしようもないって事か。 それか、西尾さんや村田さんが言っている「本家」の人が来てくれるのを待つしかないんだね。 歯磨きを終え、部屋に戻った私は、いつでも外出出来るように準備を始めた。
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