疑惑の追跡

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「ようし!そろそろ出掛けようか音彩ちゃん……って、なんだその格好はあああああああああっ!!」 ノックもせずにいきなり戸を開けた西尾さんが、ニコニコ笑顔から一転、顔を歪めて大声を上げた。 何って……スカートにパーカーだけど、何かおかしいかな? 「制服を着もせずに、そんないつでも着れるような服を選ぶなんて……なんて嘆かわしいんだ。いや、今からでも遅くはない……さ、聖なる衣に袖を……」 「丁重にお断りします……と。さあ、行くなら早く行こうよ」 デスクに置かれていた、昨夜、西尾さんが人形から剥がしたお札を手に取って私は部屋の入り口へと歩いた。 それを、首を傾げて不思議そうにみる西尾さん。 「それ、何に使うの?」 私が手にしたお札を指差して尋ねる。 「何って……また何かに襲われた時に、守ってくれるかなーと思って」 昨夜の悪霊を消滅させるくらい強力だったし、何かに襲われても、私には何も出来ないから。 「それにはもう、ほとんど力が残ってないよ。そうじゃなきゃ、人形の中にいた霊も、お札を貼られた時点で消えていただろうしね」 そう言い、西尾さんはコートの内ポケットからお札を一枚取り出した。
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