疑惑の追跡

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「……おっと、これは」 それを見て、西尾さんの声のトーンが下がる。 エスカレーターで二階に上がって改札口の前、行き交う人の群れの中に……姫ちゃんと響さんが、こちらを向いて立っていたのだ。 「あんた達、何なの?もしかしてずっと私達を尾けてたわけ?変態はその男だけだと思ってたのに……」 呆れた様子で首を横に振って、私をチラリと見る。 「え!?わ、私は違……」 「変態と呼ばれるなら、俺はそれを受け入れよう!聖なる衣に白いパンツの天使に言われるなら本望だっ!」 西尾さんが両手を広げて姫ちゃんに近付き、帽子を脱いで深々とお辞儀をした。 それを聞いて、慌ててスカートを押さえる姫ちゃん。 ……そんなだから、私まで変態扱いされるんだよ。 「……姫はさがってなさい。彼らが用があるのは僕の方だろうからね」 姫ちゃんと西尾さんの間に割って入って、響さんが私をチラリと見た。 「お前なんかに用があるわけがないだろ!!俺は天使にしか興味がないんだよ!!」 割って入った響さんを押し退け、西尾さんが姫ちゃんに近付こうとした時だった。 響さんのスーツの下、ベルトに装着されたホルダーに、あの試験管が刺されていたのだ。
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