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それはつまり……この駅を利用している人の何人かが、一斉に私達に襲い掛かるという事?
命令を聞く蟲……それは自然発生している物とは明らかに性質が違うというのがわかる。
「そいつは……ちょっと勘弁だな」
西尾さんが、背後にいる私をチラリと見て、再び響さんに視線を向ける。
「動かなきゃ良いんだろ?俺は、雫ちゃんに憑いた蟲をどうにかしてくれたら、蟲使いなんかとやり合う気はない」
その言葉に私は驚いた。
西尾さんの性格だったら、雫ちゃんをあんな目に遭わせた蟲の主を見付けたら、怒り狂って襲い掛かると思ったのに。
そうだよね……蟲を取り除く事が最優先事項だよね。
私が思っているよりもずっと、西尾さんは冷静だった。
「……蟲下しはここにあるよ。あれは、僕が飼育した蟲の中でも特殊でね。無理に取り出そうとすれば、さらに奥に入ってしまうんだ。最後は……そう、霊体を食い尽くしてしまうだろうね」
スーツの胸ポケットから、人差し指と親指でつまめるほどの小瓶を取り出して、私達に見せる。
「……でもね。これは簡単には渡せないね。わかるだろ?なぜ、僕があの子に蟲を憑かせたのか」
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