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何か、意味があって雫ちゃんを誘拐して、あの蟲を取り憑かせたの?
その理由は私には全くわからない。
だけど……西尾さんには心当たりがあるようで、険しい表情で響さんを睨みつけている。
「知らないとは言わせないよ。キミは、僕達蟲使いの天敵、西尾家の人間なんだろう?だったら、僕が誰かはわかるはずだ」
「蟲使い……九条の人間か。家業の事は俺には関係ない。だから、無関係の天使を巻き込むな!」
西尾家……九条……私には何もわからない。
だけど西尾さんと響さんの間には、個人ではなく、家の問題があるのだと理解出来た。
「そうは行かない。偶然とは言え、見付けた西尾家の人間だ。少女を助けられずに見殺しにしたとなれば、信用を失うだろう?そしてキミが死ねば……九条の名は裏世界で有名になる」
そう言って、響さんは持っていた試験管を六本放り投げたのだ。
人が多い駅、二人を尾けていたつもりが……私達はまんまとおびき出された!
ガシャンと割れた試験管から、大量の蟲が飛び出して、通り掛った人達に次々と取り憑く。
「汚いぞ、この変態野郎!」
「キミには言われたくないね」
にこやかに答えた響さんが手を上げ、それを下ろすと同時に私を指差した。
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