疑惑の追跡

14/32
前へ
/182ページ
次へ
何か、意味があって雫ちゃんを誘拐して、あの蟲を取り憑かせたの? その理由は私には全くわからない。 だけど……西尾さんには心当たりがあるようで、険しい表情で響さんを睨みつけている。 「知らないとは言わせないよ。キミは、僕達蟲使いの天敵、西尾家の人間なんだろう?だったら、僕が誰かはわかるはずだ」 「蟲使い……九条の人間か。家業の事は俺には関係ない。だから、無関係の天使を巻き込むな!」 西尾家……九条……私には何もわからない。 だけど西尾さんと響さんの間には、個人ではなく、家の問題があるのだと理解出来た。 「そうは行かない。偶然とは言え、見付けた西尾家の人間だ。少女を助けられずに見殺しにしたとなれば、信用を失うだろう?そしてキミが死ねば……九条の名は裏世界で有名になる」 そう言って、響さんは持っていた試験管を六本放り投げたのだ。 人が多い駅、二人を尾けていたつもりが……私達はまんまとおびき出された! ガシャンと割れた試験管から、大量の蟲が飛び出して、通り掛った人達に次々と取り憑く。 「汚いぞ、この変態野郎!」 「キミには言われたくないね」 にこやかに答えた響さんが手を上げ、それを下ろすと同時に私を指差した。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2166人が本棚に入れています
本棚に追加