2166人が本棚に入れています
本棚に追加
響さんの置き土産、蟲に取り憑かれた人達が、じわじわと私に向かって迫って来ていた。
「な、なんで私……」
「くっ!!音彩ちゃん、逃げろっ!!」
おばさんに押さえ付けられたまま、西尾さんが声を上げる。
その声で、慌てて振り返って走り出したのは、私と蟲に取り憑かれた人達。
に、逃げろってどこに!!
下りのエスカレーターを駆け下りて一階のホールを走り、駅を飛び出した。
振り返ってみると、言葉通り、操られた人達が私を追い掛けて、物凄い勢いで走って来る。
そのあまりに異様な光景は、幽霊が迫る以上に恐怖を感じる。
もしも捕まれば……一体何をされてしまうかわからない!
響さんは酷い事をしないと信じたいけど……あの様子だと、殺される可能性もないと言い切れない!
張っていた網に、偶然引っ掛かった西尾さんを炙り出す為に、雫ちゃんに蟲を憑かせた……そして、西尾さんを陥れる為に、雫ちゃんを殺そうとしている。
昨日出会ったばかりの私なんて、ただ目的を達成する為の道具に過ぎないのかな。
そう考えると少し悲しくなるけど、今はそんな事を考えている場合じゃない。
この状況をどうにかしないと……。
最初のコメントを投稿しよう!