2166人が本棚に入れています
本棚に追加
何もする事が出来ず、人の群れから逃げる事20分。
そろそろ足が疲れ始めて、速度が少し落ち始めた。
でも、追い掛けて来る人達はそんな疲れなど感じないかのように、徐々に私との差を詰めて来る。
個人差はある。
走るのが苦手そうな体型の人は、蟲が憑いていても足は遅い。
問題なのは……スポーツマンタイプの人。
もう、私との差は10メートル程で、疲れたなんて言ってられない。
それでも……無情にも差は詰まる。
このまま捕まってしまうのかな……と、泣いてしまいそうになった時だった。
前方に、見た事のある大きな人影が見えたのは。
右に左に、もうどこを走っているかわからないくらいに曲がったけど、あそこに立っているのは……村田さんだった。
「む、村田さん!!」
私の声に気付き、不機嫌そうな表情を向ける。
「全く……あのバカ、電話を掛けて来たと思ったら、お嬢ちゃんを助けてくれだと?場所を言わねえから、探しちまっただろうが!!」
言い終わると同時に、こちらに向かって駆け出す村田さん。
私とすれ違うと、追い掛けて来ていた人に向かって、地面に叩き付けるようなパンチを見舞ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!