疑惑の追跡

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何もする事が出来ず、人の群れから逃げる事20分。 そろそろ足が疲れ始めて、速度が少し落ち始めた。 でも、追い掛けて来る人達はそんな疲れなど感じないかのように、徐々に私との差を詰めて来る。 個人差はある。 走るのが苦手そうな体型の人は、蟲が憑いていても足は遅い。 問題なのは……スポーツマンタイプの人。 もう、私との差は10メートル程で、疲れたなんて言ってられない。 それでも……無情にも差は詰まる。 このまま捕まってしまうのかな……と、泣いてしまいそうになった時だった。 前方に、見た事のある大きな人影が見えたのは。 右に左に、もうどこを走っているかわからないくらいに曲がったけど、あそこに立っているのは……村田さんだった。 「む、村田さん!!」 私の声に気付き、不機嫌そうな表情を向ける。 「全く……あのバカ、電話を掛けて来たと思ったら、お嬢ちゃんを助けてくれだと?場所を言わねえから、探しちまっただろうが!!」 言い終わると同時に、こちらに向かって駆け出す村田さん。 私とすれ違うと、追い掛けて来ていた人に向かって、地面に叩き付けるようなパンチを見舞ったのだ。
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