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しばらくして、その場から人の群れがいなくなったのか、村田さんが出て来いと手招きをした。
私は恐る恐るビルの間から出て、辺りを見渡してホッと一息。
響さんと姫ちゃんを尾行したつもりが誘い出されて、現在に至るまでの事を出来る限り細かく村田さんに伝えた。
「なるほどな。西尾家と敵対する所の跡取りが、名を上げる為にお嬢ちゃんを殺そうとしたってわけか。だとしたら、相当ヤバい事になってるな」
タバコを吸いし、携帯灰皿で火を消してポケットに戻した村田さんは、殴り倒した、蟲に操られている人達を見た。
「こいつらも運がねえな。偶然駅に居合わせただけなのによ。裏稼業のやつらの暴走は、時としてとんでもねえ被害を生むんだよ」
私も蟲に憑かれた人を見てみるけど……もう、どこにも蟲は憑いていない。
昨日のひったくりのように、気絶したら宿主から離れるのかな?
雫ちゃんを拐った人の、蟲との違いが気になったけど、いなくなっているなら安心。
「村田さん、助けてくれてありがとうございます。西尾さんは大丈夫でしょうか?」
「まあ、あいつは殺したって死ぬようなやつじゃねえよ。とりあえず俺は店を開けて来るから、お嬢ちゃんはどうする?来るか?」
私の命を狙っている人達がいる……この状況で断れるほど安全ではないと、身を持って知らされた。
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