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 両者が一礼する。垂れ下がった髪を払いのけると、ジョージがなぜか審判の少年に近づいた。マイクを寄越せとアピールしている。渡されたワイヤレスマイクをもったまま、両手をあげて大講堂の観客にその場で回転してアピールする。いつものジョージとは明らかに様子が違った。  この天才児にはスタンドプレイなどこれまでの養成高校の生活には必要なかったはずだ。成績はつねに圧倒的な1位なのだ。座学だけでなく、戦史でも体術でも、戦闘シミュレーションでも他を圧している。  マイクを口元にあげ、にっこりと俳優のような笑顔を見せる。カメラがジョージの顔をアップで映(うつ)し、それが4面ある大型電光掲示板で輝いた。女性客のため息が聞こえる。 「この進駐官養成高校で最強の生徒、東園寺崋山くんと闘えることを、ぼくは心から光栄に思います」  いったいなにをいいだすのだろうか。嫌な汗でタツオの背中が濡れた。マイクショーが続く。
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