4人が本棚に入れています
本棚に追加
一番近いと思っていた愛する者からの大いなる拒絶。沢山の思い出が走馬灯のように駆け巡った。
悲しみのあまりショックを受けていた俺だがふと誰かからメールがくる。
イケメンリアルゲーム運営事務局からだった。
今週の新作アイテム。これであなたももっとイケメンに!
クソ、今月の給料全部課金して顔をブラッシュアップだ。
夕方また秋間原のアイドル劇場の傍に立つ。
目の前に目を潤ませたさえかが立っていた。
「日比野くん……さえかずっと待ってた」
良く言うよと思いながら俺はそのまま黙って去ろうとした。
しかし信じられないことにさえかは僕の腕を自分の腕に巻きつけてにっこりと少し顔を蒸気させて微笑んでいる。
「じょ、冗談はよしてください!」
そう腕を払おうとした俺は目の前の劇場のドア越しに映る自分を見て驚愕した。さえかの隣に見慣れないイケメンがいる。
これが俺?!
「んもう~さえか日比野くんがこんな素敵だなんて今まで気づかなくてごめんね」
「ううん」
嬉しいーー。
課金して自分の顔をブラッシュアップした途端こんなさえかにモテるのなら多少高くても思い切り課金すればよかった。
そうこの世界は課金さえすればなんでも自分をカスタマイズできるんだ。
さえかと分かれた俺は爽快な気分で帰ろうとした、が、また少し不安が過る。またしても控え室に行くとさえかはこんな事を言っていた。
「日比野、顔はだいぶ良くなったけどね、もう少し知性が欲しいかな、声も、背もあったらなぁ」
俺は震える手でスマホのイケメンリアルゲームを押し、カスタマイズページに行く。
今まで痩せる課金、毛をふさふさにする課金、背もだいぶ課金して伸びた。声もガラガラ声から課金してかなりマシに。体臭も課金してだいぶ抑えた。待ってろよさえか、俺はもっと課金してお前の理想の男になってやるからな。
俺の知らないところでそのさえかは磨きに磨いた男(生贄)で遊んでいるのも知らずに。俺は課金地獄に陥っていた。
さえかはスマホのイケメンリアルメイクゲーム。という画面を見てニヤついていた。
最初のコメントを投稿しよう!