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朝、通勤時間に俺はスマホでネットをしていたら、変なバナーが出てきた。「イケメン男子の恋愛リアルゲーム」などというタイトルで、登録してブラッシュアップすればあなたはイケメンの男子になりモテモテ。好きな女の子を自分のものに。
くだらねぇ。
俺は普通のサラリーマン日比野平太独身35歳。少し痩せ気味だけど、顔も平均点くらい。特別もてるわけもなく。彼女いない歴がまんま年齢というありがちな男だ。
今日も満員電車で会社に行く。まぁ普通の会社でそれなりの給料でこんな平凡でつまらない俺は平日はただひたすら働く会社員だ。
そんな俺にも週末はとっておきの楽しみがある。
今日はやっと金曜日だ。あー俺の週末がやっとくる!
俺の天国は秋間原のとある小さなビルの地下一階で展開されていた。
そこで特待生の俺は専用のロッカーが備えつけられている着替え場所に行く。
鈍く光るライトサーベルを構え、戦闘服に着替える。
会場は真っ暗だが定位置にスタンバイしてさぁ、俺の時間が始まる。
「いけいけいけいけさーえーかー! ノレノレノレノレさえか!」
俺は普段仕事でもこんなに動いたことのない軽快なリズムで首に巻いたキラキラモールを揺らしながら、大好きな一押しアイドル、剣身さえかちゃんの応援にいそしむ。
これが俺が生きている証であり、全てなのである。
もちろんライブが終わればさやかちゃんの写真やCDを今回は50枚買ったから最近は握手だけでなく10分お話もできる。
「いつもありがとう日比野くん、さえかとっても嬉しいー!」
俺は今日も充実した一日だったと満足して、帰る前にトイレに行こうとした。そこで途中迷ってしまったらしい。館内をウロウロしているとそこに控え室なるものを見つけた。
俺はいけないと思いながらそっとその控え室を覗く。
するとそこには憧れのさえかちゃんが丁度お化粧を落としているところだった。
「あーあ。仕事とは言えかったるいね」
さやかちゃんが隣の子と話している。
「まぁでもさ、あたしたちもニコニコしてなきゃ、それが商売だものね」
「イケメンファンはいんだけどね、毎回来てるあの痩せっぽちの男」
「ああ、ホネホネ日比野くんね」
「あーあいつだけはどうしてもキモくて」
俺はキモイのかさえか!
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