4人が本棚に入れています
本棚に追加
「だといいのだけれど」
苦し気に眉をひそめて茉莉花は言う。
「私――言い過ぎたでしょうか」
「そうではないわ」
振りかぶって、茉莉花は言った。
「どうかしら、政君とうちの子は、仲良くやっていけると思う?」
「さあ、息子さん……にはお目にかかってないから、わかりませんけど……。お母様は政さんには?」
「会ったことがあるわ」
「似てます?」
「そうね、残念だけどさっぱり。声は似てるけど。あの子は慎さんの若い頃にそっくりなの」
じゃ、格好良いんですね、と加奈江は言った。
「うーん、多分、ですけど。政さん、お義父様に強いコンプレックスを持っていますから。かなり難しいかもしれません」
「あら、残念」
「でも、わからないですよね、先のことなんて。案外、味のある兄弟になるかもしれません」
どんな兄弟像だろう。
「見てみたいわ」
茉莉花は言った。
「私が生きている内に、実現すればいいけど」
加奈江は普段から表情が読めない、味気ないと言われる。今日ほど自分の『特技』をありがたく思ったことはない。
茉莉花は、何気なく言ったのかもしれない。けれど、もしかしたら、彼女は、――自分の先行きを悟っているのでは。
加奈江は口の中が干上がりそうになりながら、唾を飲み込み、答えた。
「大丈夫です、ふたりで、実現させましょ、お義母様」と。
最初のコメントを投稿しよう!