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「おい、小宮。そろそろ起きないと、シャワー浴びれなくなるぞ」
「う……ん、はい?」
もう朝か。カーテンの向こうは強烈な朝日だ。
「おはようございます。室長、体は大丈夫ですか」
習志野は顔を真っ赤にしてしまった。だが体は思ったより頑丈なようだ。今後の為にもそれは喜ばしい。
シャワーを終えて部屋に戻ると、習志野はすっかりネクタイまで締めてピシッとしている。その後ろからそっと抱きしめた。
「なあ、小宮」
「はい……」
「俺のことずっと好きだったって言ってたよな」
「はい」
「でもお前、いつか恋人は途切れたことないって、言ってなかったっけ?」
全くこの人は、なんでそんな昔の、それもちらっと言ったことを覚えているんだろう。
「そうですね。途切れたことあんまりなかったです。今はいないけど」
あれっ? もしかしてこれって……焼きもち的な、アレですか?
昨日使わなかった、きれいなほうのベッドに習志野を押し倒し、そのちょっとだらしない脇腹に頭を摺り寄せた。
「あのね、室長」
「なに?」
やっぱりちょっと怒ってるよね。
「恋人はいました。だって室長は、俺にとって絶対叶わない、手の届かない人でしたから。だから恋人ができる度、今度こそ運命の人かもしれない、今度こそ室長を忘れられるかもしれないって思って、いつもつきあってきました。でも、ダメだった」
「……」
「やっぱり、そんな風につきあうから、うまくいかなかった。今なら相手から大切にしてもらえなかった理由もわかります」
「でも俺おっさんだぜ……ゲイだとしてもお前なら、その……もっと格好いい奴とか……いるだろ」
「だからそれは愚問だって、昨日から何度も言ったじゃないですか。室長だから、好きなんです」
「でも」
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