第1章

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 そんな俺が入社後ずっと恋焦がれていたのが習志野。俺はできる男なのだが男運だけは、昔から悪い。はっきりいってだめんずウォーカーだ。これは自信を持って言える。  遊ぶ男はともかく、つきあった男でまともな奴はいたことがない。ビッチ、ヤンデレ、借金、詐欺……。  ここまで無傷でいられたのが不思議な位のラインナップだ。  こんなにデキる俺が、さえないおっさんの習志野なんかに惹かれてしまうのは、自分でも未だに納得がいかないのだが、好きになったものはしょうがない。  それに歴代の彼氏に比べたら習志野は多分まともな方だろう。  ただひとつ歴代の彼氏と違うところ、それは習志野がノンケであるということ。  俺がド田舎の工場に引っ込んで、パートの元御姉様方の派閥抗争に巻き込まれている間に、習志野は彼女ができて、結婚して、そして離婚した。勝手な想像だが、多分全部相手に流されたのだと思う。  離婚した時は、ひとりで祝杯をあげたものだが、結婚を知った時は悲しみと悔しさのあまり食べ物は喉を通らなくなり、本気で滝壷に身を投げようとした。なにしろ自然だけは溢れるほどある場所だったのだ。  そんな紆余曲折を経て早五年、やっと……やっとこの春研究室に戻れた。一応副室長という肩書きのオマケとともに。
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