第1章

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 そして今、少し前までの勤務先、工場への出張に出ている。今回の出張は二泊三日、新商品の製造工程の確認と、勉強会の講師を習志野がするのだ。必然的に勝手知ったる元工場長の俺が同行することになった。  準備は万端だ。昨日と今日の朝、ちゃんとヌいてきた。これから長い道中ずっと習志野と肩を並べて行くのだ。時には膝が触れ合ってしまうかもしれない、眠気に襲われた習志野の頭が、俺の肩にもたれかかってくるかもしれない。そんなことをされて勃たない自信は一ミリもない。 「小宮、書類の方は準備、大丈夫?」 「いえ……タブレットごとすべてデータを忘れました」 「……じゃあどうすんの?」 「工場には私専用のPCを残してあります。さっき研究室に連絡を入れたら井田がいたので、すでに資料は共用フォルダに全部入れてもらってます」  日頃から仕事の『見える化』してたのが幸いだった……。井田はすんなりとすべての資料を集めてくれた。 「サンプル容器と、試作品は……?」 「それは、大丈夫です」   ――鞄に入れっぱなしだったので……。  いけない……俺は仕事ができるはずなのに、習志野と一緒ということばかりに浮かれておかしなことになっている。  持っていく下着はもちろん、体のメンテナンスやグルーミングは完璧なのに。  いかん、身を……いや気を引き締めていかないと……。
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