2014年某日。

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 孫陸ことタライ専門店陸攻堂店主一式陸攻曰わく、バカズトこと実兄一式カズトが珍しく約束を守っているという。 約束とは勿論、かつて一式翁の義兄であった及川悟98歳の介護を、一切陸攻に押し付けないというものであった。 何しろこの及川悟、若き日と同様に自己保身に関しては凄まじく知恵が回る。 分かりやすい例を挙げると、女性介護士に所謂セクハラを散々行っておきながら、追及されるや素早く認知症という堅牢な要塞に逃げ込んでしまうのだ。 「私はそんな事をした覚えはない! お前名前は何だ? 変な言い掛かりをつけるなら、役所に訴えてやってもいいんだぞ! 俺を誰だと思っている! さてはクズブタに唆されたな! 何て陰険な奴だ! 昔のことをいつまでも根に持ちやがって…」 現在悟が入って、否、入れられている社会福祉法人一琉会が経営する老人ホームでは、スタッフに利用者を呼ぶ時は苗字に様付けで呼ぶよう徹底させており、利用者全体を指す時は利用者様と呼ばせているという。 現在同法人が経営する老人ホームに勤めている陸攻の知り合いに拠ると、一琉会系列の老人ホームではそれが当たり前であるらしい。
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