消失

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『名前:夏目遥(なつめ はるか)  性別:男  年齢:17歳。  生年月日;1997年/9月25日』  書類を下に読み進めていくと僕こと夏目遥と言う人間は、市内病院の院長夫妻の子供であった。だが、交通事故に遭い夏目晴彦、その妻・貴美子が死亡し、それに加えて両親共々一人っ子で親戚がいないと言うことである。  つまり、天涯孤独の身というわけなのだろう。  誰に当てたというわけではないが僕は脳内整理を兼ねて、ゆっくりと前を向き言葉を吐き出した。 「医者の息子ってことは坊ちゃんってことだったんですね」 「そうなるね」  僕の言葉に岸先生が相槌を打ってくれたことによって、なんとなく緊張がほどけ僕は書類を封筒にしまった。  カレンダーを見てみれば今日は十二月二十日、冬真っただ中だなぁと考えた時に急に寒気が襲った。考えてみれば当然のことで、部屋から出る際には寒いからと、いつも岸先生のお下がりである冬物のパーカーを羽織っていた。  だが今日は岸先生に呼び出されたことにより、それを着ていなかった。身震いしながら僕は凍えた手を温めるかのように、自分の手を自らの吐息で温めた。  岸先生はいつの間にかホットココアを淹れてくれたらしく僕に手渡してくれた。僕はそれを受け取ると一口、少し冷ましながら口にした。ほんのりとしたココアの甘みと温かさが冷たい手に触れ、僕が変わっても何一つ変わらない温かさと味と香りに安堵した。
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