消失

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 手作りの朝食を食べ終わり一通り雑務をこなした後、時刻は十一時頃になっていた。  自室にいた僕は何をしようか考えていたが、ふと目についたものを掲げてみる。自分のことが載っている書類の入った封筒だ。つまりは個人情報なのだから厳重に扱った方がいいのだろう。  考えがそのまま行動に出て、机の引き出しの一つの鍵を開けて書類をその中に仕舞うとすぐに鍵を閉めた。引き出しの鍵は隠す場所がないので机の裏にでもテープで張っておこう。その鍵の在りかを何かに書いてでも忘れないようにしたい。だが、安易な場所なので忘れることもないだろうから、メモを残さなくても大丈夫だろう、という結論に思い至った。  ふと外に出かけてみようかという考えが頭をよぎる。確かこの近くにコンビニがあったはずなので、そこまで行ってみよう。それに言葉の色については、自分自身のことなので興味がある。僕は冬物の厚手の灰色のパーカーとジーパンと、いった完全な部屋着で外に出た。  人の多い通りでは様々な色が、飛び交っている。児童養護施設から一歩出た瞬間に僕は茫然としてしまった。街にあふれる『青』『赤』『黄色』『オレンジ』『緑』『黒』__飛び交う色が溢れすぎて、気分が悪くなりそうだった。僕なりに覚悟はしていたが、色と色が重なり合ったりして混じった色はかなり酷い。  あえて例えるならば黒に近いような色合いではある。だが、日常生活では見ない気味の悪い色だった。  それを直視するのが嫌で少し目線を下に下げながら、ゆっくりとコンビニに向かって歩き出した。  
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