消失

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 平日の昼間とあってか喫茶店や安いファミリーレストランは窓から見ても混み合っていた。ランチタイムというやつなのだろう。  そろそろと顔を上げてみれば目的地であるコンビニはもうすぐだった。再び顔を下げてからあることに気付く。  ここまで来たのは良いのだが僕は何も買う目的がないと。そもそも岸先生にも外出するとは言わずに無言で来てしまったからお金もない。  コンビニの前をゴールにしようかと一人考えた時、不意に体が後退した。いや正確に言えば飛ばされたといった方がいいか。尻餅をついたときに僕は他人とぶつかったのだということを理解した。 「だ、大丈夫っすか?」  そう言いながら、そっと手を伸ばしてくる。女性の声だった。  僕は、少し戸惑ってからその細い手を取った。手を貸してもらい立ち上がった後、彼女の顔を見る。  髪型はショートカットで、どちらかと言えば活発そうな印象を受ける。目が少々つり目な典型的な可愛らしい少女だった。彼女の着ているセーラー服からでも、華奢な体つきなのは見て取れる。なんとなく身軽そうな印象を受けた。
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