消失

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 少し時間がたってから児童養護施設にたどり着く。中に入ると僕は二階の一番右側にある自室に向かった。  ドアを開けると少し殺風景な景色が広がっており他の部屋と同じく家具は勉強机とベッド、クローゼットというような、大学生が一人暮らしできるくらいの家具が一式揃った部屋である。ちなみに、テレビはリビングにしかない。”皆でご飯を食べる”というのがここのモットーだからである。  本格的にやることがなくなり、暇を持て余してしまった。  そういえば身元が分かったということは、もう学校に行けるのだろうか。だとしたら、僕は今の生活が出来なくなるのも嫌だな。でも人と交流ができるのは楽しそうだし、この能力を少しでも活用できるだろうか。 「あーあ」  僕はベッドに身を投げ出し、天井に向かってため息に似た息を吐き出した。あの業務的で淡々と行われていた作業と別れる日が来るのは、少し悲しい気がする。  それでも、岸先生の話を聞くに高校生活は楽しそうだなぁ。  これからの生活を夢見てそんな呑気なことを考えていた。
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